──コンコンッコンコンッ



あたしが開けなくても、構わずその音は続いた。
たまに音がなくなってホッとして、数時間後にまたその音が響いての繰り返し。

ちょうど土曜でやすみだったから、次の日もあたしは家を出ることもなく過ごした。

賢晴の顔を見たくなかったから。
だって、見たらないてしまう。
そしてもしも謝られたら、許してしまう。

合鍵を渡していなくてよかったと思った。
だって、そうしたら絶対に入ってきてしまうから。

家にいれてしまいそうになることもあった。
ドアノブに何度手をかけたことか。

その度に、ダメだって思い直して手を引っ込める。
その繰り返しだった。

弱い心のままだから。
どうしても、賢晴が自分の前からいなくなることが耐えられない。
でも、いまはいるべきじゃないと思う。

月曜の仕事は、いつもよりも少し早く。
賢晴が家の前にいないことを確認してから病院に向かった。

病院にいる間は、賢晴は何も言ってこないから。