好きだった。
大好きだったのに、どうしてこうなってしまったのか。

たしかに最近は話してもいなかった。
賢晴にずっと避けられていたから。

あの、患者を取ろうとしてるとかそんな話からもう1ヶ月経っていた。

でも、星野さんは相変わらず賢晴の担当だし分かってくれると思っていた。

だって、こんなことで壊れるわけがない。
大学1年からの付き合いだ。
そんなことをするような人じゃないって、信じてくれると思っていたあたしがバカだった。



──コンコンッコンコンッ



「……っ」



賢晴が家に来る時の合図だ。
ここに越してきたのは、今年の四月。
でも、7月から賢晴がこの家にくることはなくなったから久しぶりに聞いた音だった。



「潤、頼むから開けてくれよ」



ドアを開けて、何をすると言うのだろう。
だって、裏切られたという感情しかもうあたしにはない。

何を言われるというのだろう。
早川さんと付き合うとでも言うのだろうか。