だいたい、あたしはそんなことしてもいないのに。
そういう風に仕向けたのは目の前にいるこの人自身だ。



「唯……、潤と俺の問題だから」


「もう!あたしがビシッと言ってあげるのに!」



いつの間にか〝早川さん〟から〝唯〟と呼び方が変わっていた。
どうやら、今日初めてとかではなさそうだ。



「いいんだ、俺がちゃんと話すから」


「賢晴くんったら優しいんだから」



早川さんは、賢晴にぞっこんらしく、頬を赤らめている。


……しおらしい。
早川さんを見てあたしから出てきた感情はただそれだけだった。



「家、はいっていいですか?」



ふたりが真ん中にいるせいで、あたしの部屋への道が塞がれている。



「潤」


「いま、なにも話したくなんてないから」



ふたりの間を割って、鍵を差し込んでドアを開ける。
ガチャン!っと少し乱暴にドアを閉めれば、あたしだけの空間だ。



「……ふっ」



頬につたうのは涙。