「ははは……」



出てくるのは乾いた笑い。

何をしているんだろう、あたしは。
ここになんのためにいるんだろう。
いつから、事務員になったのだろうか。



「もう無理だ……」



ずっと一緒に頑張ってきた清川さんの言葉にあたしの心は折れた。



「本日限りで辞めさせていただきます」



絶対に負けないと思っていたのに。
さすがに心が追いつかなかった。



「わかった」



課長は、特に何も言うことはなかった。
早くやめて欲しいと思っていたのだろう。
急な退職も何も思っていないようだった。

特にすることもないので、置いてあった私物などをまとめる。



「お母さん、1回家に帰ってもいいかな」



あの家にもいることはできない。
もう、誰の近くにいたくなかった。
電話でお母さんに帰るとだけ、告げた。



「実家に帰るってなに?」



たまたま、リハビリ終わりの時間で戻ってきた賢晴があたしの前に立ちはだかる。



「もう、ここ辞めたから」


「は?俺なにも聞いてないんだけど」



この後に及んで何をいうのだろう。
まだ、彼氏気取りなのだろうか。