そうか、幼馴染か。なら、クラスの誰よりも砕けた会話をしていたのにも頷ける。

 普段の感じと、その口調のギャップに、まんまとドキドキさせられてしまったわけである。


「で、宮野は盗み聞き? お前も早く教室に戻んないと、マジで授業はじまるぞ」


 すれ違いざま、晄汰郎に声をかけられる。

 さっきは目が合っても白々しく逸らしたくせに、今度はしっかりと詩と目を合わせて。


「……計算、なの?」

「は?」

「今の、あの男子との」


「だから、なにが。聞こえてただろ、幼馴染との会話に計算なんて必要あんの?」

「いや、私も近くにいたから、なんかギャップっていうの? ……そういうのを感じさせたくて、わざと言ってたのかなって」


 ギャップを印象付けようとして、わざと乱暴な言葉遣いを選んでいたのだとしたら、私よりよっぽど計算高い。

 ゴリラ坊主のくせにいっちょ前に駆け引きとか、晄汰郎って実は案外、そういう男なのだろうか。


「だったら、なに。だから宮野って顔は可愛いんだけどナイんだわ。そういうふうにしか物事を捉えられないって、どうなの」