「猿渡のやつ、問い詰めたんだけど、なーんにも話してくんねーの。なんなのあいつ」


「えー。でも、そりゃそうでしょ。うちらが偶然見ちゃっただけだもん。根掘り葉掘り聞くのは野暮じゃん? むしろ口の堅い猿渡の男らしさに一票だよ。統ちゃんたちには、そんなとこ、全然ないんだもん」


「コラてめー、杏奈!」

「でも本当のことじゃーん」


 べー、と可愛らしく舌を出して金曜日の彼女の後ろに身を隠す杏奈という名前の子は、すぐさま盾になっている彼女に「ね、くるりもそう思うでしょ?」と同意を求めた。

 彼女は、やや曖昧に「うん」と言って、ちらりと〝統ちゃん〟とやらに目を向ける。


 波風を立てないように様子伺いをしているように見えたけれど、もしかしたら、くるりはもともと、この話題に興味はないのかもしれない。

 どこか上の空な彼女は、ほかの四人が揃って目を向けている無人のグラウンドではなく、その少し先の民家だったり遠くの山だったりを見ているような横顔をしている。


「おお、晄汰郎じゃん! 相変わらず、いつも絶妙な坊主頭してんねー!」


 すると、唐突に〝統ちゃん〟が廊下の向こうに声を張り上げた。ちょうど彼らの近くを歩いていた詩も、歩調はそのままに思わず振り返る。……どこに行っていたんだ。