カチャンと響いた施錠の音に、さすがに我に返った詩は、さっきのように真っすぐに自分を見つめてくる晄汰郎に尻込みし、反射的に後ずさる。


 まさか月曜日の朝っぱらからなにかしようなんて考えてはいないだろうけれど、申し訳ないが怖いものは怖い。

 だって、いくら同級生とはいっても、そこは男と女だ。力で敵うはずもない。


「五分、十分でどうこうするか、バーカ。教室だとうるさくて落ち着いて話せないから、静かなところに移動しただけだから」


 すると晄汰郎が、表情筋が強張りきった詩にふっと微笑をもらした。

 あからさまに警戒して滑稽だと思っているのだろうか。その微笑には多分に嘲《あざけ》りが含まれているように思えて、悔しくて下唇をきゅっと噛む。


「聞きたいのは、ひとつだけ。金曜のあれはなんだったの? 俺はどうすればいいの?」


 そんな中、再度、今度はゆっくりと、噛みしめるように晄汰郎が尋ねた。

 詩の警戒心を解くためなのだろう、戸のそばから離れる様子もなく、降参するときのように両手を顔の脇に上げている晄汰郎は、不覚にもちょっとだけ可愛くて困る。


「……」

「……」