野球部で鍛えられた反射神経がものを言ったのか、目にも止まらぬ速さで晄汰郎に腕を取られてしまい、あれよあれよという間に教室を連れ出されてしまう。


 クラスメイトや詩の友人たちの「何事だ?」「どうした?」という視線を体中に嫌というほど感じながらの連行は、羞恥心に耐えがたい。

 前につんのめりそうになったのも、もちろんそうだ。


 もうすぐ次の授業だというのに、晄汰郎はいったいどこに連れて行こうとしているのだろうか。

 とにかく恥ずかしいから、もうやめてほしい。

 お願いだから。ほんとマジで。


 休憩中の生徒で賑わう二年生の階の廊下をずんずん連行されながら、詩はもう、脳内パニックの状態だった。

 金曜日の、自分でも説明のつかない奇怪な行動といい、今のこの晄汰郎のわけのわからない行動といい、頭の中は真っ白。頬が火照り、あまりの恥ずかしさからか、瞳にも薄っすら涙が滲んだ。


 そんな詩のことはちっとも気に留めやしてくれずに、やがて先週と同じ別棟の空き教室へ連行した晄汰郎は、先に詩を中へ通し、自らは後ろ手で戸を閉め、鍵までかけた。


「ちょっ、えっ……?」