そういうわけで、できれば本人には会いたくなかったのだけれど、残念なことに体調不良には見舞われず、しかも同じクラスなのだから、逃げも隠れもできなかった。

 それに、いくら常に冷静沈着がフォーマットの晄汰郎と言えども、自ら詩の席にやってくるくらいには、気になっていたのだろう。


 二時限目の授業後、ついに業を煮やしたようにズカズカと詩の席にやってきた晄汰郎に完全に意表を突かれた詩は、正面から真っすぐに見下ろしてくる彼をぽかんと口を開けて見上げたまま、しばし固まってしまった。


「……」

「……」

 二人の間に沈黙が走る。


 心の準備ができていれば、席を立つなり目を逸らすなりして、どうにでも避けられた事態だった。けれど詩はまさに晄汰郎のことを考えている真っ最中だったので、その本人が目の前に現れてしまっては、とっさにはどうすることもできない。


 友人たちにしつこく報告をせがまれ、じゃあ昼休みに詳しくと、とりあえず時間を稼ぐことにしたのは登校後すぐのことだ。

 それまでに金曜日に起こったことをいい感じに捻じ曲げなければならない。事実をありのままに話すにはどうにも詩のプライドが邪魔をして、素直に友人たちに泣きつけない。