「……格好よくなんてないよ、私は」


 頬杖をつき、窓の外の今日もよく晴れ渡った秋空を眺めながら、朱夏はぽつりと独白をこぼした。

 数瞬置いて隣の席の男子から、なにか言ったか? とこちらに顔を向ける気配があった。けれど朱夏は、それに気づかないふりをして、そのまましばらく小鳥がさえずり飛んでいく秋晴れの空を眺め続けた。


「おーい、大垣、こっち向けー」


 案の定、授業そっちのけでぼぅっとしている朱夏に生物教師の注意がかかる。

 すぐに、すみませんと頭を下げたものの、しかし朱夏はそれ以降もまったく授業に集中できなかった。


 私はいったい、どうしたいんだろう?

 授業終わりのチャイムが鳴って席を立っても、答えはいまだ、出そうになかった。