……難しいよね。すごく難しい。

 きゅっと下唇を噛みしめ、朱夏は自分の恋と重ねて香魚に心からの同情を送る。お守りの数だけ想いがある。

 それを今、どうしようもなく再確認させられたような気分だった。


「あ、でも、お守りを作るだけで満足してるわけでは、けっしてないんだよ? 渡したいし、できればりんごも、もらいたい。……それでも、もう二個も溜まっちゃった」

「……うん」


 そっか、去年は渡せなかったのか。

 また切なげに微笑む香魚に、朱夏も微妙な笑顔を返す。けれど、四年片想いしているのだから、少し考えれば察せることだ。


 そして今年も作ったそばから『渡せないで終わる』とすっかり諦めきっている香魚の心情は、朱夏にはわかる部分が多い。

 難しいのだ、すごく。勇気なんてはじめから少しも奮い立たないくらい、ものすごく。


「ああ、でも、朱夏ちゃんなら私みたいな考え方はしないよね。うだうだ考える前に渡しちゃいそう。それに、渡された相手も絶対喜ぶと思う! だって朱夏ちゃん、背が高いからモデルさんみたいで格好いいし!」


「そ、そんなことないと思うけど……」

「ううん、格好いい」

「……そっかな。ありがとう、香魚ちゃん」

「好きな人ができたら、頑張ってね」

「うん」