そのことがきっかけで、香魚は悠馬に恋をしたらしい。
どこかで聞いたような話だと思ったら、まんま自分のことで、朱夏は「そっかぁ。そりゃ、なかなか渡せないわ……」と言葉を返すだけで精いっぱいだった。
まるで自分を見ているようで、無責任に頑張れなんて、とうてい言える気分でも雰囲気でもない。
頑張りたくても頑張れないことって、きっと世の中にはたくさんある。香魚のそれは、そういう部類の〝頑張れない〟だ。
「うん。優ちゃんは、ああ言ってたけど、剣道着で外周に行く姿をこっそり眺めて眼福とか言ってる時点で、私みたいな日陰女子には接点なんて作れるわけがないんだって」
「……」
そう言って切なげに微笑む香魚に、朱夏はとうとう、なにも言えなくなってしまった。
香魚もきっと朱夏と同じだ。
いつ告白されるだろう、いつ彼女ができるだろう、もしかしたら悠馬のほうから誰かに告白するかもしれない、付き合っちゃうかもしれない、と常にハラハラしながらの片想い。
想いは募るばかりで、でもだからこそ告《い》えない――そんな恋を、もうひとりで四年もしている。
どこかで聞いたような話だと思ったら、まんま自分のことで、朱夏は「そっかぁ。そりゃ、なかなか渡せないわ……」と言葉を返すだけで精いっぱいだった。
まるで自分を見ているようで、無責任に頑張れなんて、とうてい言える気分でも雰囲気でもない。
頑張りたくても頑張れないことって、きっと世の中にはたくさんある。香魚のそれは、そういう部類の〝頑張れない〟だ。
「うん。優ちゃんは、ああ言ってたけど、剣道着で外周に行く姿をこっそり眺めて眼福とか言ってる時点で、私みたいな日陰女子には接点なんて作れるわけがないんだって」
「……」
そう言って切なげに微笑む香魚に、朱夏はとうとう、なにも言えなくなってしまった。
香魚もきっと朱夏と同じだ。
いつ告白されるだろう、いつ彼女ができるだろう、もしかしたら悠馬のほうから誰かに告白するかもしれない、付き合っちゃうかもしれない、と常にハラハラしながらの片想い。
想いは募るばかりで、でもだからこそ告《い》えない――そんな恋を、もうひとりで四年もしている。