体育館からぞろぞろと引き上げていく、ふたクラスぶん、総勢七十名近い同級生たちの波に若干呑まれ気味な様子で歩いていた香魚が、横から顔を覗き込んできた朱夏に気づいて「……え?」と目をぱちくりさせる。
どうやら香魚は、自分に話しかけられているとは思っていなかったらしい。
ぐーっと首を伸ばして朱夏を見上げる香魚の顔は純粋に驚きに満ちていて、余計なことを言ってごめんね、あとデカいからすごく見上げさせてごめんと、朱夏は少しだけバツが悪くなる。
「でも、本当にそう思うんだよ。私なんてほら、お守りを作ること自体、似合わないし。今週いっぱいは時間があるんだから、どうにか頑張ってみることって、できない?」
「……でも、クラスも離れてるし、そもそも私のことを知らない可能性だってあるよ。中学が同じで、高校まで追いかけてきちゃったけど、唯一話したのって、中二のときだし」
「え、そんなに前なの?」
「うん。実はそうなんだ。しかも『ペン落としたよ』、『ありがとう』って、たったそれだけ。優ちゃんとお揃いで買ったものだったから拾ってもらえて嬉しかったし、助かったけど……ほんと、それだけなんだよね」
どうやら香魚は、自分に話しかけられているとは思っていなかったらしい。
ぐーっと首を伸ばして朱夏を見上げる香魚の顔は純粋に驚きに満ちていて、余計なことを言ってごめんね、あとデカいからすごく見上げさせてごめんと、朱夏は少しだけバツが悪くなる。
「でも、本当にそう思うんだよ。私なんてほら、お守りを作ること自体、似合わないし。今週いっぱいは時間があるんだから、どうにか頑張ってみることって、できない?」
「……でも、クラスも離れてるし、そもそも私のことを知らない可能性だってあるよ。中学が同じで、高校まで追いかけてきちゃったけど、唯一話したのって、中二のときだし」
「え、そんなに前なの?」
「うん。実はそうなんだ。しかも『ペン落としたよ』、『ありがとう』って、たったそれだけ。優ちゃんとお揃いで買ったものだったから拾ってもらえて嬉しかったし、助かったけど……ほんと、それだけなんだよね」