四年片想いをしてきたからこそ、行動に移せないことだってある。
まして相手は中学時代もろくに話したことはなく、部の三年生が引退してからは副キャプテンを務めているような、人望も実力もある人だ。クラスも違うし、選択授業だってかぶらない。そもそもの接点がないのに加え、悲しいことに、いくら同じ中学出身とはいっても向こうは香魚のことを知らない可能性だって十分にある。
それくらい香魚は、昔から目立たない女子だった。なんとも致命的な欠点である。しかも、去年の夜行遠足のときも本命お守りを作ったものの、自分の鞄に入れて持ち歩くだけで精いっぱいだったという消極ぶりだ。
もちろん今年も作るだけ作ってみるつもりではある。けれど、お守りを渡そうなんて、なんて私は身の程をわきまえていないんだと自分でもおおいに納得してしまうほど、香魚の消極ぶりは見事に徹底されているのである。
……渡せない、とても。まして本命なんて。
「私が渡さなくても、どうせもらうよ、一松くんは。だってモテるじゃん、格好いいじゃん。もし万が一、お守りを渡せたとしても、きっと私にはりんごは返ってこないよ」
はあ、とひとつため息をこぼし、顔だけこちらを向いている優紀に力なく笑う。
まして相手は中学時代もろくに話したことはなく、部の三年生が引退してからは副キャプテンを務めているような、人望も実力もある人だ。クラスも違うし、選択授業だってかぶらない。そもそもの接点がないのに加え、悲しいことに、いくら同じ中学出身とはいっても向こうは香魚のことを知らない可能性だって十分にある。
それくらい香魚は、昔から目立たない女子だった。なんとも致命的な欠点である。しかも、去年の夜行遠足のときも本命お守りを作ったものの、自分の鞄に入れて持ち歩くだけで精いっぱいだったという消極ぶりだ。
もちろん今年も作るだけ作ってみるつもりではある。けれど、お守りを渡そうなんて、なんて私は身の程をわきまえていないんだと自分でもおおいに納得してしまうほど、香魚の消極ぶりは見事に徹底されているのである。
……渡せない、とても。まして本命なんて。
「私が渡さなくても、どうせもらうよ、一松くんは。だってモテるじゃん、格好いいじゃん。もし万が一、お守りを渡せたとしても、きっと私にはりんごは返ってこないよ」
はあ、とひとつため息をこぼし、顔だけこちらを向いている優紀に力なく笑う。