どうやら、ここにも恋がはじまりつつあるようだ。

 この時期になると、やたらとモーションをかける人が増えるんだよなぁ、男子も女子も。

 ぶっ、なんて、ちっとも可愛くない笑い声を上げてしまった朱夏も、それはそれとして、そんな優紀と朝倉を羨ましく思う。


 てか、湊……か。

「で、作るの?」「渡すんだよね?」と興奮しきった様子で尋ねる朱里の声を遠くに聞きながら、朱夏はバドミントンコートを軽快に動き回る白くてひょろい後ろ姿を見つめる。


 *


 朱夏、朱里、それと湊――湊響也《きょうや》は、今年から同じクラスになった仲だ。

 正確には、朱里と湊は一年のときから同じクラスで、そこに朱夏が加わった、という言い方が正しい。


 去年は香魚と優紀も同じクラス。ふたりと入れ替わる形で朱夏が湊と朱里と同じクラスになったのである。

 部活では同じ体育館を使っていることもあって、もとからそこそこ仲のよかったらしい朱里と湊のもとに、クラス替えがきっかけで朱夏が自然と混ざるようになり、そうして今に至る。


 湊を好きになったきっかけも、あの手この手でアレンジされ尽くして、もう少女漫画のネタにもならないくらいの平凡なものだ。