朱夏には、そうまでして告白する勇気も、お守りを渡す度胸も、もう完全に削がれてしまうに等しい。

 どうしてこうなる前に頑張らなかったんだろうと後悔を抱えたまま、残りの学校生活を送ることになるだろう。


 告白が成功して付き合いはじめるとは限らない。それでも懸念や不安な気持ちは、湊を好きでいるうちは、ずっと変わらないのだ。

 いつ告白されるだろう、いつ彼女ができるだろう、もしかしたら湊のほうから誰かに告白するかもしれない、付き合っちゃうかもしれない。

 そんなふうに常にハラハラしながらの片想いは、すこぶる心臓に悪いし、あまり夢見のいいものでもない。


「……そう言う優ちゃんだって、本命が欲しいって言われて、まんざらでもない感じじゃんか。あれからチラチラ目が合うようになってるの、私、知ってるんだからね」

「え、そうなの!? 誰、誰!?」

「こら香魚!」


 ぽつりとこぼした香魚の反撃に、朱里が目をキラキラさせて優紀に尋ねる。

 優紀は自身の額に手を当てて深いため息をつくと、裏切ったな、とでも言いたげな様子で香魚をひと睨みした。しかし香魚は、さっきのお返しだと言わんばかりに、どこ吹く風を装う。

 中学の頃からの仲だという優紀と香魚だからこその、ケンカになりようもないケンカだ。