校舎の外に出ると、詩は少しの間だけ足を止め、スマホを片手に歩き出した。いつもは裏門からグラウンドの脇を通って駅への坂道を下るのだけれど、今日は正門のほうから帰ろうかと一瞬迷ったためだ。
けれど、でも、と思い直し、詩は慣れ親しんだいつものコースに足を向けることにした。
ここで逃げたら、なんか悔しい。
もちろん、練習の真っ最中だろう晄汰郎が、詩がいつもこのコースを通って帰っていることを知っているとは限らない。グラウンドにはほかに陸上部やサッカー部やテニス部がうじゃうじゃとひしめき合っているし、緑色のフェンスで囲まれて視界が悪くなっているグラウンドの外に、わざわざ目を向けることがあるとも、なかなか思えない。
せいぜい逸れたボールが飛んでくるくらいだろう。
でも詩は、一年半、同じコースを通って帰っているものの、そういえば一度も逸れたボールに出くわしたことはなかった。きっとタイミングとか運とかいう、自分の力ではどうにもならない次元の問題なのだろう。
晄汰郎への勘違いも、お守りも、すべてはそれ。そうやって無理やりにでも片づけてしまわないと、自分のあまりの格好悪さに、駅へ向かう足が止まってしまいそうだ。
けれど、でも、と思い直し、詩は慣れ親しんだいつものコースに足を向けることにした。
ここで逃げたら、なんか悔しい。
もちろん、練習の真っ最中だろう晄汰郎が、詩がいつもこのコースを通って帰っていることを知っているとは限らない。グラウンドにはほかに陸上部やサッカー部やテニス部がうじゃうじゃとひしめき合っているし、緑色のフェンスで囲まれて視界が悪くなっているグラウンドの外に、わざわざ目を向けることがあるとも、なかなか思えない。
せいぜい逸れたボールが飛んでくるくらいだろう。
でも詩は、一年半、同じコースを通って帰っているものの、そういえば一度も逸れたボールに出くわしたことはなかった。きっとタイミングとか運とかいう、自分の力ではどうにもならない次元の問題なのだろう。
晄汰郎への勘違いも、お守りも、すべてはそれ。そうやって無理やりにでも片づけてしまわないと、自分のあまりの格好悪さに、駅へ向かう足が止まってしまいそうだ。