「ほんとごめん、親に用事頼まれてたの、すっかり忘れちゃってて。次は行くから」

「次は絶対だぞー」


 彼女の謝罪に対して、間延びした男子の声が廊下に響く。

 その声を背中に受けてひとり歩いていく彼女を横目に、すぐに窓の外のグラウンドに目を向けはじめた男子三人、女子ひとりのグループの脇を通り抜ける。

 すれ違った彼女はおそらく、このグループのうちのひとりだろう。どこかに誘われていたようだったけれど、親の用事なら仕方がない。


 自分の教室から鞄を取ってくると、例の四人――ひとり帰ったから正確には五人グループは、まだグラウンドを眺めていた。

 詩はふと、そこにはなにがあるんだろうと思う。


 けれど、詩の今の気分は、楽しそうに笑い合っている四人とは正反対の鬱屈とした気分だった。気分上々ならぬ、気分下々だ。

 詩は彼らの後ろを少しだけ速足で通り過ぎる。ただ笑っているだけだから不快もなにもないのだけれど、好きでもないのにフラれた今は、気分的にあまり聞きたくなかった。