しかし現実は先のとおり。意図せずでも、そうでなくても、女子ならきっと誰もがするだろう計算をいとも簡単に見抜き、手作りのお守りも、あっさりと突き返す始末。

 ただ彼氏にしたいと思っただけなのに、なんで私がフラれたみたいになってんの!?


「好きなもんか、あんなやつッ!」


 べしっ。

 赤のギンガムチェックの可愛らしいお守りが、掃除のときに当番が掃き残した埃にまみれて、どんどん薄汚れていく。すなわち詩の怒りは収まるところを知らない。


 はあはあと肩で荒く息をしながら、目元に浮かんだ涙を乱暴に拭う。

 人間の体とは不思議なもので、すごく怒っていても涙が滲む。だからこれは、手に取りもせず「いらない」と言われて傷ついているとか、計算を見透かされて恥ずかしいとか、けっしてそういう涙じゃない。

 絶対、そういうんじゃない。


「……ほんっと最悪」


 そう毒を吐きながら、このまま放っておくわけにもいかないお守りを拾い上げ、荒れた手つきでスカートのポケットにねじ込む。

 計五回はぶん投げたそれからは、怪我をしたときのための絆創膏や、男子が歩く105キロにちなんで105回書いた目的地の『碁石到着』の小さな紙の音に紛れて、晄汰郎が好きでよく舐めているハニーレモン味の飴の包装フィルムがこすれ合う音がした。