みんな口に出しては言わないけれど、心の中ではいつも自分がヒロインで、二十四時間年中無休で王子様を待っている。そこにはもちろん〝自分だけの〟という条件が絶対だ。

 それ以外は受け付けられない。いくら向こうに好かれても。どんなにイケメンでも。


 そういう点を鑑みても、晄汰郎はまさに詩の理想どおりの男子だった。

 いざというときのリーダーシップも申し分ないし、周りからの信頼も厚い。

 晄汰郎に任せておけば、晄汰郎の意見をまず聞いてみよう、と誰もが自然にその存在を頭に思い描いてしまうような高校生男子なんて、リアルな世界では、そうそういるはずもないのだから。


 また、彼女ができたら彼女一筋そう、と当然のように思わせてくれるところも、詩の理想どおりだった。

 彼女がいるという噂は聞いたことがなかったけれど、これだけ完璧な要素が備わっているんだから、彼女になる子は間違いなく大切にしてもらえるに違いないと詩は思うのだ。

 晄汰郎には不思議と、そう思わせるなにか特別な力がある。