「最悪っ。こんなの作るんじゃなかった!」


 硬派に見せかけて、中身はあんな毒舌野郎だったなんて! めっちゃ騙されたしっ。

 詩は、野球ボールとバットを模してフェルト生地を切り抜き作ったお守りの、表の飾りつけを鋭い目つきで睨みつけ、べしっ。

 もう一度、思いっきり壁に投げつけた。



 計算しない女子なんていない。

 それが詩の持論である。


 どんなに天然が入っている子でも、男子の前では多かれ少なかれ自分の天然ぶりをアピールするのが普通だし、もともと計算高い子なんかは――もちろん詩もだが、計算していると思われないように計算して男子と接する。

 みんながこぞって「格好いい」「彼女になりたい」なんて言うような男子なら、なおさらのことだ。そこには多分に憧れや妄想が練り込まれているけれど、接する機会があれば、やっぱりみんな思うことはひとつだ。


 可愛く見られたい。それに尽きる。

 だってそれが本能ってもんでしょう!

 詩は声高々に思う。


 可愛く見られたい、惚れられたい。あわよくばイケメンに。みんなが指を咥えて羨ましがるような、そんな完璧男子に。

 それって普通のことなんじゃないの?