「……なにやってんだろ、私は」


 ひとりごちて、夕飯時の買い物客でそれなりに賑わっている、田舎らしく少々寂れた商店街を駅へ向かって歩きはじめる。

 けれど、周りの賑やかさとは反対に、くるりの足取りはずしりと重かった。


 嘘をついてカラオケをドタキャンしてしまったこと、偶然ではあるけれど、猿渡と陸部の彼女のやり取りを見てしまったこと。自分自身の中の焦る気持ちとは裏腹に、なにをしたらいいかわからず、それが空回りしていること。

 熱くもなりきれず、かといって適当にもなりきれない、この中途半端さ……。


「なんでみんな、あんなに頑張れるんだろ」

 買い物客や同じ蓮高の下校生が行き交う商店街を歩きながら、くるりは考える。

 私はいったいなにを頑張りたいんだろう。そもそも、どうしてこんなに焦っているんだろうと、くるくる、くるくる、と。


 しかし、考えれば考えるだけ頭も胸も、もやもやが溜まっていく。

 そのうち、統吾たちが来てしまうんじゃないかとはっとしたくるりは、嘘をついた後ろめたさや罪悪感から、逃げるようにして商店街を走り抜けた。


 電車に乗っても、もやもやも罪悪感も消えてくれない。車窓からは、首を垂れた黄金色の稲穂が、憎たらしく思えるくらい、風に吹かれて気持ちよさそうに波打っていた。