統吾たちといると、とにかく楽だ。みんなでぬるま湯に浸かっているような安心感が、とても心地いい。でも、それと同じくらい、これでいいのかと焦る。

 けれど焦ったところで、どこに向かって頑張ったらいいかも、なにを頑張ったらいいかも、くるりはもうわからなくなっていた。もしかしたら、バスケ部を引退するときに、中学を卒業するときに、三年間慣れ親しんだ校舎のどこかに置いてきてしまったのかもしれない。


「すみません、今日はお金持ってなくて」


 黙って店を出るのもどうかと思い、レジカウンターに引っ込んでいたおばさんに一声かけてから、手芸店をあとにする。

 店から数歩離れたところで足を止めると、自分でもびっくりするくらい心臓がドキドキしていて、無性に泣きたい気分になった。思わず制服の上から心臓のあたりをぎゅっと掴む。


 ……私には買えない。とても買えない。だって、目的なんてひとつもないんだから。


「はあ……」

 ひとつ大きく息を吐き出し、宙に視線をさまよわせる。けれどその先には薄汚れた商店街を覆うアーチしか見えなくて、くるりはすぐにローファーのつま先に目を落とした。