「……」


 ごくりと唾を飲み込み、恐る恐る生地に手を伸ばす。

 神社などで売られている実際のお守りのように、蓮高女子が作るそれも手のひらにすっぽり収まるサイズなので、大きな生地である必要はない。『お守りセット』と称して、糸と、飾りに付けるフェルト生地が何色かセットになって売られているそれは、実際に手に取ってみると、とても軽くて驚く。


「この時期になると、みんな買っていくのよねえ。今日なんて、あなたでもう十人目よ。可愛いわよねえ。青春って感じで」

 すると、いつの間に隣にいたのか、お守りセットを持つくるりの手元を覗き込むようにして、おばさんが話しかけてきた。


「はあ……」


 なんと返したらいいか、とっさにはわからず、曖昧な返事になってしまうと、照れていると思ったのか、おばさんは「おっと、詮索しちゃうのは年を取った証拠ね」と肩を竦めて離れていく。

 そんなおばさんに、また曖昧に笑顔を返しながら、詮索されるだけマシだよ、とくるりは内心でため息をついた。


 生地を見たらなにかわかるかもしれないと思ったけれど、いざ手に取ってみても、実際にはなにもわからなかった。それが切ない。