くるりは思い出していたのだ。

 二日前、いつものように統吾たちと放課後の教室で特に意味もなく喋っていると、ちょうどどっと笑いが起きたタイミングで廊下を歩いていた女子ふたり組が立ち止まった。ちらりと目だけを向けると、顔くらいは知っている、隣の隣のクラスの女子だった。


 その後、彼女たちは、気を取り直したようにお守りの話をしながら帰っていった。そのときに少しだけ聞こえたのは、これから生地を買いに行こうか、なんていう、この時期の蓮高では珍しくもなんともない話題。


 けれど、くるりの目には彼女たちがとてもキラキラして見えて、羨ましかった。

 純粋にいいなと思った。可愛い、と。


 本命お守りを作りたいと思える相手がいること、赤のギンガムチェックの生地を買いに行けること。それを友達同士で共有し合えること、結果がどうであれ、やりきったと心から満足して当日を迎えられるだろうこと。

 もちろん、お守りを作っても渡せないまま終わってしまうこともあるだろう。特にくるりから見て奥側にいた女子は、見るからに内気そうな子だった。


 でも、それでもいいじゃないかと、くるりは思ったのだ。

 ――私なんて、なにも頑張ろうとしてないよ。それに比べたら、よっぽど……。