猿渡の目線に気づいた例の女子が、恐る恐るといったふうに振り向く。
ここの位置からでは彼女の【蓮丘高校陸上部】とプリントされたジャージの背中しか見えなかったので、半分ほどではあるが彼女の顔が拝めた統吾たちからは「ヒュ~」と囃《はや》し声が上がった。
統吾たちの姿を認めて、逃げるように練習に戻っていく女子。いまだにこちらを見上げたまま、微動だにできない様子の猿渡。なおもヒューヒューと囃し立てる声。
……なんてバカバカしいんだろう。
そのときふと、くるりは全身の熱がさーっと冷めていくような感覚を覚えた。
高校に入ってからは、熱くもならず、冷めもせず、周りに合わせて学校生活を送ってきた。それこそがくるりが望んでいたもので、類は友を呼ぶとでも言うのだろうか、杏奈や統吾たちという、無理して頑張らなくても適当にやればいいじゃん、というスタンスの仲間もできた。そんな自分に満足していた。
夜行遠足だって、今年はみんなと同じように、適当に理由をつけて途中リタイヤしようとずいぶん前から決めていた。
だって、死にそうな思いをして頑張ったって、どうせりんご一個だ。買ったほうが断然早いし、秋になるとりんご農家がはじめる無人販売では、形が不揃いだったり、ちょっと虫食いがあったりして売り物にはできないりんごが一袋六~八個入って、たったの百円で売っている。
ここの位置からでは彼女の【蓮丘高校陸上部】とプリントされたジャージの背中しか見えなかったので、半分ほどではあるが彼女の顔が拝めた統吾たちからは「ヒュ~」と囃《はや》し声が上がった。
統吾たちの姿を認めて、逃げるように練習に戻っていく女子。いまだにこちらを見上げたまま、微動だにできない様子の猿渡。なおもヒューヒューと囃し立てる声。
……なんてバカバカしいんだろう。
そのときふと、くるりは全身の熱がさーっと冷めていくような感覚を覚えた。
高校に入ってからは、熱くもならず、冷めもせず、周りに合わせて学校生活を送ってきた。それこそがくるりが望んでいたもので、類は友を呼ぶとでも言うのだろうか、杏奈や統吾たちという、無理して頑張らなくても適当にやればいいじゃん、というスタンスの仲間もできた。そんな自分に満足していた。
夜行遠足だって、今年はみんなと同じように、適当に理由をつけて途中リタイヤしようとずいぶん前から決めていた。
だって、死にそうな思いをして頑張ったって、どうせりんご一個だ。買ったほうが断然早いし、秋になるとりんご農家がはじめる無人販売では、形が不揃いだったり、ちょっと虫食いがあったりして売り物にはできないりんごが一袋六~八個入って、たったの百円で売っている。