しかし前を歩いていた三人が急に騒ぎはじめ、窓にべったりと両手を付いて、ああでもない、こうでもないと言い合いをはじめてしまった。


 目ざといというか、なんというか。

 偶然見つけただけなんだろうけれど、向こうは――特に女の子のほうは本気の本気、大真面目にやっているんだから、そっとしておいてあげたほうがいいんじゃないのかな。


 わざわざ野次馬根性を爆発させてニヤニヤしはじめる杏奈たちに、くるりは若干、引き気味の感情を覚える。別に悪いことじゃないし、ぶっちゃけ私もすごく気にはなるけど。


「マジかよー。誰だ誰だ、渡されてんのは? クソ羨ましいな、このやろぉー」

 するとすぐに統吾も参戦し、くるりの言葉は言いかけのまま行き場をなくした。……なんだろう、ほんの少しの疎外感みたいなものが、一瞬だけ、くるりの胸に影を落とす。


「ほらほら、くるりも見てみなって!」

「ああ、うん」

 男三人の間からぴょこんと体を逸らし、ぴょこぴょこと飛び跳ねながら手招きをする杏奈に、数瞬遅れてくるりも倣う。


 こういうときのこの人たちの異様なまでの目の良さや、一瞬でマックスに到達するテンションは、いったいどこから湧いてくるのだろうか。

 夜行遠足は蓮高きっての一大イベントなだけあって、この時期になると学校中が異様なテンションに包まれるけれど、この四人のそれはどこか種類が違うようにくるりには思えて、うまく付いていけない。