「統吾は頑張んないの?」

 尋ねると、ちらりと視線だけをよこして、

「頑張ったって、どうせりんご一個だし」

 さして興味もなさそうに統吾は言う。


「まあ、割に合わないけどね」

 そう返しながら、そういえば去年は統吾も私と同じ途中リタイヤだったっけ、と思い出す。瑞季、雄平、杏奈ももれなくそうで、仲間内では誰も完歩できなかったんだよなという事実が、一年ぶりによみがえる。


 あとから聞いた話では、四人とも、適当なところで適当な理由をつけてリタイヤしたらしい。元バスケ部で体育会系が体に染みついていたくるりは、地味に完歩を目指していたけれど、四人とくるりとでは、そもそものリタイヤの理由が大きく違ったのだ。


「本命をもらったら頑張っちゃう?」

「え、くるり、くれるの?」

「まさか。最初から完歩を目指してないようなやつに縫うお守りなんてないわ」

「だよなー」


 試しに聞いてみると、統吾からはひどく腑抜けた返事が返ってきた。ほんとにやる気ないんだから、とちょっと腹が立つ。けれど、それと同時に統吾らしいなとも思ってしまうのだから、なんだか不思議な男である。

 相変わらず目線は天井付近のまま。そんなに上ばかり見て転んだりつまずいたりしないのだろうか。なんとなく心配だ。