放課後特有の、なんとなく校舎全体がたわんだような気だるい空気の中、五人連れ立って教室をあとにする。

 音楽室のほうからは吹奏楽部のチューニングの音が聞こえ、外からは野球部やサッカー部、陸上部などの掛け声に混じって、バットの金属音が聞こえた。耳を澄ませばドリブルやランニングの足音も響いてくるようで、ともすれば、それらによって校舎が揺れるような、そんな気さえする。


 体育館からは遠いので聞こえるはずもないのだけれど、バド部やバレー部や剣道部なども、それぞれに活動の真っ最中の音を響かせているはずだ。なぜか蓮高にはバスケ部がなく、その音がもともと存在しないのが、ほんの少しだけ寂しく思う。

 けれどそれと引き換えに喉から手が出るほど欲しかった自由な放課後を手に入れられたのだから、今の自分の状況に不満なんて感じるはずもない。


「よくやるよなあ、みんな。もうすぐ夜行遠足だし、きっと運動部の連中は、みんな一位を狙って真面目に頑張るんだろうなあ」


 廊下の窓から見えるグラウンドに目を落としながら歩いていると、隣の統吾が間延びした調子で言った。そちらを向くと、統吾は頭の後ろに手を組んで天井をぼぅっと眺めていて、その横顔は、どこか間抜けだ。