「あああっ!」

「うぉっ!?」

 くるりの絶叫にも似た声に驚いた統吾が、反射的にカエルが跳ねるように、くるりの机から飛び退く。が、もう遅い。


「なにやってんのよ統吾! アイラインずれちゃったじゃん! もう最悪なんだけど。あんたが机に手を付いたりするからっ」

「げ。マジで?」

「責任を取んなさいよ、責任を」


 くるりは失敗した目元のまま、引きつった笑みを浮かべる統吾をきつく睨み返した。

 とはいえ、統吾が代わりにアイラインを引いてくれるわけでもなければ、まぶたの縁を大きくはみ出し、あらぬ方向に伸びたそれを拭き取ってくれるわけでもないことは、くるりだってよくわかっている。けれど、文句を言ってやらなければ気が済むはずもない。


「いや、うん……ごめん、マジで」

「なにやってんだよ、統吾ぉ」

「統ちゃん、怒られてやんの。バカじゃん」


 くるりのあまりの剣幕にすっかり委縮し、しゅんとして謝る統吾の後ろから、男女入り混じった野次と笑い声が響く。はみ出したアイラインのおかげで、ぱっと見、目尻が切れ上がったような目元のまま統吾を睨み続けながら、くるりは内心、もっと言ってやれと仲間を焚きつける。これで何度目だと思っているんだ、今度やったら高級アイスだ。