去年は初めての夜行遠足だった。
女子は早朝から一日をかけて道のりを歩くのだけれど、ちょうど半分まで歩いたところで上りきった太陽の熱に中てられ、熱中症の症状に見舞われた。
幸い症状は軽く、救護車の先生に助けてもらってしばらくすると体調も落ち着き、事なきを得た。けれど、あんなに死にそうな思いをしたのは、後にも先にも蓮高の伝統行事だとかいう夜行遠足が初めてだった。中学の部活もハードと言えばハードだったけれど、これはその比じゃない。
また今年もきつい思いをしなきゃならないのかと思うと、もともと、ほとんど聞いていなかった歴史の授業がますます遠くなり、ため息の数も重みも増していく。
ギンガムチェックって。お守りって。りんごって。アップルパイって。そんなもののために一喜一憂したり、わざわざ死にそうな思いまでして、たったひとつしかもらえないりんごを手に入れようとするなんて。
みんな、本当によくやる。
*
「くるり、お前、今日ヒマ?」
退屈だった授業もようやく終わり、だらだらと掃除をし、もう帰るだけだがとりあえず机にコンパクトミラーを立ててメイクを直していると、ちょうどアイラインを引いていたところに穂高統吾が話しかけてきた。
女子は早朝から一日をかけて道のりを歩くのだけれど、ちょうど半分まで歩いたところで上りきった太陽の熱に中てられ、熱中症の症状に見舞われた。
幸い症状は軽く、救護車の先生に助けてもらってしばらくすると体調も落ち着き、事なきを得た。けれど、あんなに死にそうな思いをしたのは、後にも先にも蓮高の伝統行事だとかいう夜行遠足が初めてだった。中学の部活もハードと言えばハードだったけれど、これはその比じゃない。
また今年もきつい思いをしなきゃならないのかと思うと、もともと、ほとんど聞いていなかった歴史の授業がますます遠くなり、ため息の数も重みも増していく。
ギンガムチェックって。お守りって。りんごって。アップルパイって。そんなもののために一喜一憂したり、わざわざ死にそうな思いまでして、たったひとつしかもらえないりんごを手に入れようとするなんて。
みんな、本当によくやる。
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「くるり、お前、今日ヒマ?」
退屈だった授業もようやく終わり、だらだらと掃除をし、もう帰るだけだがとりあえず机にコンパクトミラーを立ててメイクを直していると、ちょうどアイラインを引いていたところに穂高統吾が話しかけてきた。