「あ、まーた見てたな。そこから見るくらいなら、第二体育館に行けばいいのに」
四角く区画された田園の中の道を右に折れていった剣道部を眺めていると、背中から唐突に声をかけられ、香魚の肩はビクリと跳ね上がった。振り返ると、斜め後ろにはいつのまにか友人の河西《かさい》優紀《ゆうき》が立っていて、にやにやとにやついた顔を香魚に向けていた。
「優ちゃんか。びっくりしたー……」
「なにもびっくりすることないでしょ。私は普通に声かけただけなんだから」
そう悪びれる様子もなく言って肩を竦める優紀は、香魚の中学の頃からの親友だ。お互いに性格はわかりきっていて、変に気を使うこともないので、一緒にいるととても落ち着く。ダボダボのカーディガンだって、優紀と一緒なら不思議と自分に対してのダサさは感じない。堂々と着ていられる。
教室の中にいる優紀は、掃除の時間から開け放たれている窓枠に頬杖をつき、香魚と同じように緩やかに吹き込む秋風にわずかに髪をなびかせる。彼女の前髪がふわりと音もなく揺れて、サイドの髪が頬を撫でる。
四角く区画された田園の中の道を右に折れていった剣道部を眺めていると、背中から唐突に声をかけられ、香魚の肩はビクリと跳ね上がった。振り返ると、斜め後ろにはいつのまにか友人の河西《かさい》優紀《ゆうき》が立っていて、にやにやとにやついた顔を香魚に向けていた。
「優ちゃんか。びっくりしたー……」
「なにもびっくりすることないでしょ。私は普通に声かけただけなんだから」
そう悪びれる様子もなく言って肩を竦める優紀は、香魚の中学の頃からの親友だ。お互いに性格はわかりきっていて、変に気を使うこともないので、一緒にいるととても落ち着く。ダボダボのカーディガンだって、優紀と一緒なら不思議と自分に対してのダサさは感じない。堂々と着ていられる。
教室の中にいる優紀は、掃除の時間から開け放たれている窓枠に頬杖をつき、香魚と同じように緩やかに吹き込む秋風にわずかに髪をなびかせる。彼女の前髪がふわりと音もなく揺れて、サイドの髪が頬を撫でる。