誰がはじめたのか、いつからそうなのかはわからないけれど、夜行遠足は、その過酷な道のりに反してひたすら胸がムズムズする行事だ。――こんな私でさえ、思わずギンガムチェックの生地を買ってしまうくらいに。


「土曜日は午前の部活だから、買うならそのあとかなあ。朱夏、一緒に行こうよ」

「うん。適当にご飯も食べて、そのあとは、また適当にブラブラして遊ぼうよ。たぶん夏休み以来だよね? 学校がはじまると、部活があるから、なかなか時間って取れないし」

「いいね! じゃあ、プリ撮ろうよ、プリ!」

「朱里、好きだねぇ」

「うん。朱夏と撮るのが一番好き~」


 今日はまだ週の真ん中、水曜日。三日後の土曜日の予定を相談し合いながら、まばらで心許ない田舎の街灯の下を並んで歩く。


 ふと上を見ると、黄金色に輝く月がとても綺麗だった。その周りを薄雲が囲み、風が吹いて雲が取れたり、かかったりを繰り返している。

 秋の虫の涼しげな声が田んぼや畦道のあちこちから聞こえ、少し肌寒いくらいの空気の中で、ひょろりと背の高いススキの穂もくったりとその首を垂れていた。