「ちょ、朱夏、言いすぎだって。でも、お互いに室内競技だから、年中、白いんだけど」


 そう言ってクスクス笑う朱里の頭頂部を背伸び知らずで悠々と見下ろしながら、どうにもしようがない自分のデカさと朱里の可愛らしさに、同時にまたチクリと胸を痛める。


 朱里は手芸も似合うだろうし、男子はみんな自分より大きい。ショートカットしか似合わない朱夏とは違い、普段は下ろしている長めの髪も、柔らかそうで、サラサラで、いい香りまでして、とぅるんとぅるんだ。


 よっぽどの選手でない限り、大学に行ってまで競技は続けない。それを思うと、中途半端にデカいより、今は悩むかもしれないけれど小さいほうが断然いいと朱夏は思う。


「朱里だって湊と仲いいじゃん。私はあんまり女子には見えないんだよ。話すといつも男同士みたいなノリになるし。私だったら、朱里から本命お守りをもらったら、なにがなんでも一番でゴール目指しちゃうけどな」


「えー、なにそれ? 仲いいってよりは、私が朱夏にくっついてるから、その流れで話すだけだって。私は別に、好きじゃないよ。本命だって作る相手もいないしさ」


「ええ? それこそもったいないよ。誰でもいいから渡してみなって。105キロの間、ずっとドキドキしちゃうはずだから」