どうやら悠馬にも本命の子がいるようではあるが、その子は最初《ハナ》から悠馬をカモにしてポイ捨てするつもりらしい。……なんということだろう。

 しかし、それはそれとして、香魚はどうしようもなく身から出た錆だよなと思ってしまう。


「ざまあみろ! 地獄行き決定だ!」

 優紀は実際に声に出している。


 不謹慎だが、これからいいように遊ばれてフラれると思うとワクワクして仕方がない。

 復讐なんて考えもしなかったけれど、これはこれで、ちょっとした復讐劇になりそうだ。


 再び優紀と顔を見合わせた香魚は、やっぱり声を上げて笑いながら、胸のすく思いでスタート地点に並ぶ生徒たちの中盤あたりに位置づけた。前のほうには、頭ひとつぶん抜けて朱夏のショートカットが見える。朱里の姿は見えないが、きっと隣にいるはずだ。


 やがて全員が位置についたところで、拡声器越しの「よーい」の声に続き、

 ――パンッ。

 スターターピストルが高らかに鳴った。

 前のほうからゆっくりと、けれど確実に動きはじめた波は、間もなくして香魚と優紀のもとまでたどり着き、後ろへ流れていく。