「大丈夫、大丈夫! 問題ないって!」

 朱夏は自転車のハンドルを握る手に力を込め、ここのところ、ずっと落ち込んでばかりの朱里を励ますことに徹することにする。チクチクと痛む胸なんて気のせいだ。


 朱里――橋本《はしもと》朱里は、かつて天才セッターと称された、バレーボール元日本代表選手・竹下佳江(よしえ)より三センチ低い百五十六センチだ。

 朱夏との身長差は十六センチ。カップルなら彼女がヒールを履いても見栄えのする身長差だが、あいにく朱夏は自分より小さい男子に恋をしている。


「そう……かな」

「そうだよ。開き直るくらいが、相手を油断させられるから、ちょうどいいんだって。朱里のトス、本当に打ちやすいし。そこをガンガン伸ばしていったら、大丈夫だから」

「……うん。朱夏がそう言ってくれると、ちょっと元気出るね。ありがと、頑張る」

「うん」


 正反対ではあるものの、朱夏も朱里も、身長コンプレックスを抱えている。

 バレーボール選手としてはそこそこ及第点の身長と、競技を続けるならリベロ向きと言わざるを得ないような、小さな身長。女子としてはデカい女と、小さくて可愛い女の子。どちらがどうとは言えないけれど、それぞれに悩みの種であることは確かである。