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「今日は……ていうか、いつもだけど、ごめんね。全然気持ちよく打てなかったよね」
練習後、とっぷりと日が暮れ落ち、街灯がまばらに灯る校門前の坂道をゆっくりと下っていると、ともに自転車を押して歩いていた朱里がしゅんと俯き、ぽつりとこぼした。稲刈りを待つばかりとなった、今年もたわわに実った稲が、すっかり暗くなった中でカサカサと優しげな音を立てて風に吹かれる。
「なに言ってるの。朱里はそのままでいいんだよ、飛べてないわけじゃないもん。正セッターなんだから、もっと胸を張る、張る!」
「でも……」
「ほら、元日本代表の竹下《たけした》さんだって、朱里と同じくらいの身長じゃん。ほかのチームにだって朱里と同じくらいのセッターもいるんだし、全然気にすることないよ」
ぐっと握り拳を作って笑いかけながら、自分との身長差が浮き彫りになるような励ましを口にする。本当はダメージが半端ないけれど、朱里と一緒になって落ち込むなんてキャラじゃないし、なにより新チームになってから正セッターを任されるようになって、ますます自分の身長を気にしだしてしまった朱里をなんとかして元気づけてあげたい。
「今日は……ていうか、いつもだけど、ごめんね。全然気持ちよく打てなかったよね」
練習後、とっぷりと日が暮れ落ち、街灯がまばらに灯る校門前の坂道をゆっくりと下っていると、ともに自転車を押して歩いていた朱里がしゅんと俯き、ぽつりとこぼした。稲刈りを待つばかりとなった、今年もたわわに実った稲が、すっかり暗くなった中でカサカサと優しげな音を立てて風に吹かれる。
「なに言ってるの。朱里はそのままでいいんだよ、飛べてないわけじゃないもん。正セッターなんだから、もっと胸を張る、張る!」
「でも……」
「ほら、元日本代表の竹下《たけした》さんだって、朱里と同じくらいの身長じゃん。ほかのチームにだって朱里と同じくらいのセッターもいるんだし、全然気にすることないよ」
ぐっと握り拳を作って笑いかけながら、自分との身長差が浮き彫りになるような励ましを口にする。本当はダメージが半端ないけれど、朱里と一緒になって落ち込むなんてキャラじゃないし、なにより新チームになってから正セッターを任されるようになって、ますます自分の身長を気にしだしてしまった朱里をなんとかして元気づけてあげたい。