けれど、もうちょっと構ってくれてもいいんじゃないか、と詩は思うのだ。まだ日は浅いが正真正銘の〝彼氏と彼女〟なのに、ちょっと冷たすぎやしないだろうか、と。

 あの日、木曜日の放課後、体育館裏で照れながら〝答え合わせ〟をしたときの可愛い晄汰郎はいったいどこに行ってしまったというのだろう。幻だったなんて思いたくない。


「えー? すごい真面目だねぇ。まあ、そういう人だって、みんなわかってるんだけど」

「真面目っていうか、むしろ真面目すぎてバカなんじゃないかって思うよ……。どうせやるなら一位を目指したい気持ちもわかるけどさ、キュンが足りないんだよ、キュンが」

「ああー……」


 同情のこもった相づちが、耳に痛い。

 ほんと、キュンが足りない。

 この中にどれだけの子が想いを実らせたのかはわからないけれど、自分以上にキュンが不足している子はいないんじゃないかと本気で思ってしまうレベルで、とにかくキュンが足りない。


 男子は体力と気力が勝負なので、甘い恋愛ごとに割く時間があるなら、少しでも自身の回復に努めたい気持ちはおおいに察せる。まして本気で一位を狙っている晄汰郎なら、毎年上位に名を連ねる強者もいるので、一瞬たりとも気は抜けないだろう。