だって、いつから自分のことが好きだったのかを教えてもらえる条件が完歩である。


 あのときは『グラウンドの脇の道を通って帰る姿を見つけたときから』と、はぐらかされてしまったけれど、完歩すれば教えてもらえるのだから、そこは俄然、気合いも入る。

 晄汰郎に構ってもらえず寂しいけれど、そのぶん、完歩へ向けてのモチベーションは、木曜日から順調に高まり続けている。


「そういえば、詩の彼氏、夜行遠足中も、ちょこちょこ連絡くれたりしてるの?」

 友人のひとりに聞かれて、詩は、もやっとした笑顔とともに、ふるふると首を振った。


「ううん、それがまったく。一位目指してるから集中して歩きたいとか言って、こっちから送っても全然相手してくれないんだよ」


 いやあんた、その言い方……。あんたもクラスメイトなんだから普通に名前で呼ぼうよそこは、と心でツッコミを入れつつ、宣言どおりひとつも連絡をよこさないゴリラ坊主を思い浮かべて、詩はため息を吐き出した。


 真面目で実直なところが好きだ。当然のように熱くなるところも格好いい。そんな晄汰郎と付き合っているなんて、いまだに、ちょっと信じられないくらいである。