「そうだよー。私は今は別に好きな人もいないんだけど、普通に憧れなの。赤のギンガムチェックは蓮高女子の伝統でしょ? だから三年間のうち、一度くらいは……って」

 そう言ってお守りを愛おしそうに撫でた杏奈は、しかしすぐに「でも」と言う。


「こういう本命も、すごくいいね! みんなで本命を持って完歩を目指すとか、私には考えつかないもん。てか、こっちのほうが、ずっとずっと青春って感じじゃない? いつできるかわからない好きな人のために憧れを出し惜しみする必要なんてないんだしさ!」


 ぐっとお守りを握って力説する杏奈に、くるりは思わず「ぷっ」と吹き出す。意外に、なんて言い方をしたら失礼だけれど、こう見えて杏奈もけっこうだいぶ熱い子らしい。

 一生懸命って、やっぱり最高にいいな。

 杏奈の新たな一面を知り、くるりはその思いを、よりいっそう強固なものにする。


「ちょっ、なんで笑うのー?」

「いや、杏奈、超可愛いなーって思って」

「えー?」