近くにいるので聞こえてしまったのだけれど、なんでも優ちゃんには、この一週間、本命お守りを打診されていた男子がいたとかで――きっと商店街で見かけたあの男子だ、とうとう折れた優ちゃんは、その彼にお守りを作って渡してあげたんだそうだ。


「で、付き合っちゃうの?」とニヤニヤした声で尋ねる香魚に、優ちゃんが言う。

「……香魚が失恋したばっかなのに私だけっていうのも気が引けるんだけど……うん」

「ほんと!?」


「なんか、だんだん朝倉もアリかなーとか思っちゃってさぁ……。惚れられた弱みってやつかな。いつの間にか、なんか好きかも、とか思っちゃって。バカみたいに一途で一生懸命で可愛いし、なんか憎めないし……」


「わあぁぁ! おめでとう!!」

「しーっ。香魚、声大きいってばっ」


 あらあら。どうやらここには、粘られ負けして実った恋があるようだ。優ちゃん本人より香魚のほうが喜んでいる声を聞くと、くるりも自然と頬が持ち上がってくる。

 昨日泣いたのなんてノーカンだ。そんなのは泣いた内に入らない。大丈夫、その強さがあれば、きっとどんなことでも頑張れる。