切ない気持ちになっていると、しかし友達のほうがそう言い、香魚と呼ばれた彼女を励ました。

 思わず振り向きそうになる。クズを相手に流す涙なんて一滴たりともあってはいけない、と勝手に励ましたりもしていたけれど、本当に泣かなかったなんて、なんて強い子なんだろう。

 くるりは、スマホに落としていた目を皿のように(みは)るばかりである。


「うん……あの直後は、私より優ちゃんのほうが泣きそうに見えたから。こんなとこで泣いちゃいけないって気持ちが奮い立ったんだよね。冷静になって考えたら、きっとこういう人だろうって幻想でばっかり見てたんだって気づいたの。今は、そのことに気づけて本当によかったと思ってる。四年も時間を無駄にしたとは思ってないけど、まあ、四年で気づけてラッキーだったなーって思うよ」

「……そっか」


「うん。それに、不思議とトラウマになりそうな気もしないんだよね。今はもう、四年の片想いにやっとケリがつけられて満足感しかないよ。自分のために頑張ってよかったなっていうか、これで新しい一歩が踏み出せるんだなーって、やっと肩の荷が下りた感じ」

「うん」


 そうしてふたりは、今度は〝優ちゃん〟のほうへと、話題を移していった。