「朱里! ここ、ここ!」


 一足先に最前列に出て場所を確保しつつ朱里を待っていると、周りの女子より頭ひとつぶん抜けている朱夏を目印にしてやってきた彼女は、迷うことなく隣に並んだ。


「香魚ちゃんも優紀ちゃんも、朱夏がいきなり駆け出すからびっくりしてたよ~。でも私も、そんな弾丸みたいな朱夏が好きだけど」

「はは。ごめん、ごめん。なんか、もうすぐスタートだって聞いたら血が騒いじゃって」

「まあね。私も騒ぐわ」

「だよね~」


 見かけによらず、と言ったら失礼だろうか、可愛らしいサイズの朱里も、こういう体力勝負のイベント事は昔から好きらしい。

 そういう点でも馬が合う朱夏と朱里は、高校からの付き合いではあるが、もう親友の域をとっくに超えて、お互いになくてはならない存在になっている。


 むしろ夫婦かもしれない。弾丸のように飛び出していく朱夏に笑顔で付き合ってくれる朱里。

 夫婦ならずとも、男女のカップルならやっぱり見た目にも映えるし、突っ走り気味な彼氏と、そんな彼氏が好きな彼女という構図は、見ていて微笑ましい。