夏休みの合宿を経てだいぶまとまりが出てきたように感じていたけれど、ラリーが続いたり相手チームが波に乗って防戦一方の展開になったりすると、とたんに浮き足立ってしまうのが、新体制となって日が浅い蓮高女子バレー部の大きな課題だ。


 ぽーんと打たれたサーブが背後から真っすぐに向こうコートへ伸びていく。サーブでなんとか崩して単調な攻撃にさせたいところだけれど、一年のリベロに綺麗にレシーブを上げられてしまい、朱夏たちのいるコート内には、にわかに緊張が走る。


 また朱里の上から打たれたら、拾うのに苦労する。頭ではそうはわかっていても、朱里はまだ前衛にいるからどうにもならない。

 案の定、ブロックの位置が低い朱里の上を狙って打たれたスパイクは、後衛が拾いきれずに太く硬い音を立てて床に突き刺さる。向こうコートではわっと笑顔が弾け、こちらコートでは、もう何度言ったかわからない「ドンマイ!」が、カラカラと空回りする。


 全国大会出場が当然、というような強豪校ではないけれど、蓮高女バレ部にだって目標はある。――せめて一勝。一勝が欲しい。


 公立校では選手が揃わないことも、口には出さないけれど、みんなわかっている。それでも今年は、百七十二センチというチーム最高身長の朱夏をはじめ、そこそこ高身長の選手が揃った。公式戦での一勝を実現するなら今の代が一番、その目標に近いだろう。