まるで隠すようにして鞄のチャックを閉めたことも、香魚には確信を深めるには十分すぎた。


 要は悠馬は、あの場ではとりあえず受け取っただけ。香魚のことは知っていても、お守りまではいらなかったということだ。

 無下に突っぱねるよりは、建前上は受け取っておけば、お返しのりんごを渡さなかった場合でも、それまでだということで相手も納得する――あの場の悠馬は、そういう、ある意味スマートな対応をしたのだろう。


 一度、悠馬の手に渡ったものを、その後彼がどうしようと、本人の自由だ。家に持ち帰るもよし、部活の仲間に面白おかしく話して聞かせるもよし……すぐに捨てるもよし。

 とりあえず受け取る、そのあとはどうしようと俺の自由、それが悠馬なりの本命お守りへの対応方法だったのだとしたら、香魚にはもうどうすることもできない。


「でも、さすがにショックっていうか、こんなことをする人だと思ってなかったから、百年の恋も冷めたって感じ。今は純粋に驚きのほうが強いよ。階段を下りたすぐのごみ箱に捨てちゃうなんて、私って、一松くんにとってよっぽどナイんだなぁ。玉砕だね」

「……」