深く息を吐いて言うと、優紀の動きがぴたりと止まった。

 顔を見ると、みるみるうちに表情が強張っていって、けれど必死にどう嘘をつこうかと頭をフル回転させている様子が香魚の目にありありと見て取れた。


 ……ああ、やっぱりそうなんだ。

 優紀に直接確かめるまでは、正直、半信半疑な部分もあることにはあった。けれど、この反応を見てしまうと、もう確定のほかない。


「優ちゃん、ごみ箱側を歩いてたもんね。捨てるふりをして拾ってくれたんでしょ、私のお守り。飴を落としたのも、わざとだよね。……へへ、わかっちゃったよ。だって優ちゃん、すごくわざとらしかったし」

「香魚……」


 それきり言葉を失ってしまった優紀に、香魚は顔をくしゃっとさせ、なんとか笑顔を作った。

 踊り場のごみ箱は網目状なので、中のものが見える。さっき掃除が終わったばかりなのに、ちょこちょことまたごみが捨てられていた中に、優紀はきっと見たのだ。


 現に「あった、あった」と言ってごみ箱から腕を抜いた優紀は、しかし香魚に拾った飴玉を見せてはくれなかった。それに、自然な動作になるように気をつけてはいたものの、明らかに香魚に背中を向けていた。