「あ」

「ん?」

「いや、捨てるんじゃないものまで捨てちゃって。まだ開けてない飴の袋なんだけど、プラ包装だし、イケる、イケる」


 しかし優紀は、そう言いながら果敢にもすぐにごみ箱に腕を突っ込み、確かにカコンと硬い音がしたそれを拾おうと試みはじめた。

 踊り場に設置されているごみ箱は、各教室にある蓋付きで中の様子が見えないものとは違い、例えば公園にあるような、口がぽっかりと空いたタイプのものだ。そこになんの躊躇もなく腕を突っ込む優紀は、勇ましいというか、肝が据わっているというか……。


 けれど香魚は、そこでなんとなく察しがついてしまった自分が、ひどく悲しかった。そして、わざわざ優紀にそんなことをさせてしまったことも、とても心苦しい。


「……優ちゃん、もういいって」


 下駄箱で靴を履き替えながら、意を決して話しかける。

 こういうのは優紀も気まずいし自分も気まずい。あとになればなるほど、話題にするのは難しくなることだ。


「いいって、なにが……?」

「……、……あったんだよね、お守り」

「……」