そうして、さっき悠馬も下りていった階段を優紀と並んで下りていくと、ふと踊り場の隅に設置されているごみ箱が香魚の目に留まった。

 高校生にもなって階段で鬼ごっこをするやんちゃ坊主がいたり、飲み物や食べ物のパックや袋をポイ捨てする生徒がごく少数ながらいるため、生徒会と美化委員会が知恵を絞った結果が〝踊り場にもごみ箱〟だった。


 それが幸いし、階段を駆け下りてきた男子とぶつかりそうになってヒヤリとすることも減ったし、ポイ捨てされたパックジュースの空き箱やパンの袋をわざわざ自分の教室に持ち帰って代わりに捨てることもなくなって、けっこう久しい。

 階段掃除の際は面倒だなと思うこともあるにはあるけれど、校内の美化には一役も二役も買ってくれているので、香魚はごみ箱の存在がとても気に入っている。


「あ、香魚、ちょっと待って。そういや私、捨てたいものがあったんだった」

「うん」


 すると、ごみ箱側を歩いていた優紀がふと足を止めた。香魚も足を止め、チャックを開けて中をごそごそしている優紀を待つ。

 優紀の鞄の中からは、チョコの包み紙や飴の包装パッケージ、用済みのメモ紙なんかが出てきて、それをくしゃりとひとまとめにすると、彼女はポイとごみ箱に投げ入れた。