香魚は大げさだな、なんて言われるかと思ったけれど、意外にも優紀は「そうだね」と優しい微笑みとともに返してくれて、ふたりで目を見合わせ、クスクス笑う。


「私も、今日の香魚を見てたら、なんでも頑張れそうな気がしてきた。あのとき香魚はあんなに頑張ってたんだから、私も負けてらんないって。きっとそう思うと思う」

「あははっ。大げさだなぁ、優ちゃんは」

「はは。確かに」


 放課後の廊下にふたりの笑い声が響く。

 大げさだなぁ、は香魚の台詞になってしまったけれど、まあそんなこともあるだろう。


 そういえば、あのグループの話し声はずっと聞こえてこなかったけれど、やっぱりあの彼女は気を利かせてくれたんだろうか。

 確か先週の今頃は、思わずびくりと肩が跳ね上がってしまうほどの笑い声が響いてきたけれど、どうやら今日は静かなようだ。


「さて。香魚の勇姿もしっかり見届けたことだし、今日はゆっくりふたりで帰ろっか」

「うんっ」


 そうして香魚と優紀は、いったん教室に戻り鞄を肩にかけると、再び廊下に出る。

 気分はもう最高だった。ふわふわと体が軽い。