ぎゅうぎゅう抱きしめてくる優紀を抱きしめ返しながら、香魚の目からは、無事にお守りを渡しきれた安堵感や達成感から涙がぽろぽろ流れてくる。

 泣きながら優紀を見ると彼女もぼろぼろと涙を流していて、香魚本人より、むしろ涙の量は多いかもしれない。


 きっと優紀は優紀で、ちゃんと渡せるだろうかと心配していたのだろう。

四年越しでやっと渡す決心をしたものの、いざ本番になったら、消極的な香魚のことだから渡せなくなってしまうんじゃないかと、教室の中でずっとハラハラしていたに違いないのだから。


「ははっ。もう感動しちゃって涙止まんないや。……でも、なにはともあれ、これでようやく伝えられたね、香魚の気持ち」

「四年もかかったけどね」

「ううん。よく頑張ったよ。頑張ってる香魚は、今までのどの香魚より格好よかった」


 そう言って流れてきた涙を指ですくって笑う優紀に、香魚もへへへと笑い返す。


 赤のギンガムチェックのお守りは、本命の証。それは悠馬とて知らないはずはない。

 それを受け取ってもらえたことは、もちろん嬉しい。

 けれど、それよりなにより、香魚は渡すための行動を自らの意思で起こせた自分自身が、一番誇らしかった。